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社長に直撃インタビュー1 | モデルルームで聞いてみた  俺にしゃべらせろ

→ミュージション新江古田
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ミュージション新江古田
(東京都練馬区)
どんな雑誌でも創刊号は、「こんな雑誌は今までになかったね」と言われるために、全力投球するもの。私たちだって、同じです。コレクション第1号の物件を選ぶまでが、とてもたいへんでした。結局、編集部での激論の末、選ばれたのがリブランの「ミュージション新江古だ」。
マンション事業は何十億事業ですから、そう簡単には決断できない。だって、音楽家は、人口割合で言えば、圧倒的に少ないのだから。その人たちだけに住宅供給するということは、ある意味、狂気の沙汰といってもいい。大きなデベロッパーでは供給したくても絶対供給できません。とにかく、なぜ音楽マンションをつくったのか、聞いてきました。
  

  
  
株式会社 リブラン代表取締役 鈴木雄二氏
  
【「リブラン」という会社】
1968年設立。これまでも東武東上線を中心に、特色ある住まいの開発を行ってきた。音楽を楽しむためのマンション・ミュージションシリーズをはじめ、環境共生型の住宅など、時代の要請に即した住宅の供給を行っている。
  

■突然、思いついて供給したわけではないんですよ。音楽マンションは18年前から供給してきたんです。1985年(昭和60年)に東京の練馬区にある成増で地下スタジオを5室持っている賃貸ワンルームマンションを企画したのがはじまりです。
ターゲットはバンドマン。素人でコピーバンドをしている人や自分で曲を作りながら音楽活動をしている若者をターゲットに賃貸住宅事業をやったらおもしろいんじゃないか、と考えたわけですよ。1985年(昭和60年)というと、僕は1967年(昭和42年)生まれなので、僕はまだ18才だった。この会社にはもちろん入社していません。だから、その頃のことは、多少想像を交えて話しますね。
●えっ、社長さん、お若いんですね。びっくりしちゃいました。
■あれ、老けてみえるのかな。まぁ、マンションの話に戻りますね。
僕は、高校時代、バンド活動に夢中だったんです。女の子に持てたい一心で(笑)。文化祭で歌なんか歌ったりしてね。そこそこ女の子には反響もあり、もてましたよ(笑)。
●それは、もてたでしょうね。バンドをやっている人ってカッコイイですもんね。
■その頃、練習のためにスタジオを借りなきゃいけないんで、京浜東北線の西川口駅の裏ぶれたスタジオを夜10時から朝6時ぐらいまで借り切ってました。費用が1万や1.5万はかかっていた。その金を親にせがむわけ、もみ手して「お願い」ってね(笑)。出してもらうためには、理由を説明しなきゃならないわけですよ。「バンド活動をやっていて、文化祭が近いから、練習しなきゃいけないんだ」と。そこでうちの親父は、最近の若者は、みんな音楽に夢中なんだと思ったんじゃないですかね。たぶん、音楽マンションを世に出した背景には、そんなことがあったんだと思います。
●音楽にこだわりを持つ人のマンションなんて、当時めずらしかったでしょ?リブランって住まいに対する考え方が昔から他とはちょっと違うんですね。
■ええ、リブランという会社は、住宅を作っていく過程で、土地を買って、コンクリートで建物を造り、中に人が住めば「住宅だ」とういう考え方はなくて、「人」が最初にあって、「その人たちがどういう暮らしをしたいのか」を先に考える「リブラン文化」のようなものが昔からあった会社なんです。

【ミュージションシリーズの歴史】
1985年(昭和60年)成増
2000年(平成12年)ミュージション川越
2003年(平成15年)ミュージション志木

【音楽マンション】
ミュージションシリーズでは、遮音性能の高い、音楽家のための住まいを言葉であらわすべくこう呼んでいる。
マンション名のMUSIC+MANSION=MUSISION(ミュージション)はまさにこの音楽マンションのこと。いわゆる、防音マンションとは、ちょっと違うのだ。
    
  
配管を伝わって音が響く
●音楽マンション第1号の結果はどうでした?
■残念ながら、失敗だった(笑)。失敗の原因は、地下にスタジオが5室あって上にワンルームの住宅がある。地下スタジオでドラムを叩くと、振動が上の階の居室になんとなく響くんですよ。水道管や下水管が地下とつながっているものですから、音がパイプを伝わって上の居室に響くんです。そういう音に対する技術的ノウハウがデベロッパー業界にはまだなかったですね。
●そんなにドラムの振動とかって、上階に響くんですか。
■めちゃくちゃ、響きますね。この前もミュージション新江古田のスタジオですが、僕、ドラムを叩いてみたんですよ。へたくその僕が叩いても、110デシベルぐらいはいきますからね。ちゃんとした人が叩けば、常時110デシベルぐらいは出ちゃう。音というのは波動ですから、床や配管を伝わっていくんです。そういう難しさがありました。
●失敗の理由はそれだけ?
■もうもうひとつは、共用のスタジオなんで、予約を取らなくちゃならないから、すぐに使えなかった。すばらしいフレーズが頭に浮かんだ時すぐに具現化することができない。思いついたときにピアノを叩いたり、ギターを鳴らすことができなくて、結局は駅前のスタジオに走って行くわけです。
●現在はどうなっているんですか?
■だんだん使われなくなって、今は倉庫です。
●えっ、もったいない。
■そう、開発した人たちは、悔しい思いをしたんだと思いますよ。
  
【パイプスペース】
マンションは縦に配管が通っている。この配管を通すスペースを言う。
図面上では「PS」と表記されている。
  
    
  
グッドデザイン賞を受賞
(ミュージション川越、埼玉県川越市)
●その悔しさが川越のミュージションにつながっていったんですか?
■川越に土地があったので、なんとかあの失敗を生かせないかなと考えました。
音楽家を目指す若者で、18歳〜22歳までの音楽大学生をターゲットにしました。大学にいっている間だけでも、本気でプロを目指して、指から血が出るまでピアノを弾きたいという若者に住んでもらいたいと考えました。
今の技術なら、始終音に触れて暮らす音楽環境を提供できるんじゃないかと。今の技術といっても、音を遮音するということは、とても微妙なことで、どちらかというと職人芸と言えるような熟練工の仕事なんですね。どこかの工場からこれを持ってくれば大丈夫という簡単な話ではありません。スタジオのひとつひとつを手作りでつくっていったようなものですよ。

ピアノを置いてもゆったり 
(ミュージション川越、埼玉県川越市)
●手間がかかりそう。具体的にはどうすすめたんですか?
■企画に入る前に、川越の場合は音大生の日常生活と練習環境を調査しました。いろいろな音大生たちと会ったんですね。会って、その人たちの部屋の使い方を聞いたんです。するとピアノの上には楽譜が山積みになっていて、今にも崩れ落ちそうだと言うんですね。ぼくの事務所と同じなんだけれど(笑)。4畳半とか6畳とかにグランドピアノを置きますから、めし食う場所も寝る場所もないわけです。ピアノの下に布団を敷いて、寝返りを打たないように寝ると言っていました。だから川越は、グランドピアノを置いて、デスクを設けて寝る場所も別に設けるという間取りプランを基本にして設計してみました。
●音大生って、どんなところに住んでいるんですか。練習音とか近所に聞こえちゃってたりして?
■そう、練習音は筒抜け。江古田あたりには音楽マンションとうたっているものがいくつかあるんですが、朝10時から夜8時ぐらいまで時間規制しているみたい。練習のできる時間でさえ、お互いどんな音が響いてこようとも我慢しようというのが実状なんです。

●それでも、「音楽をやるのに適しています」といって貸してるんですか?
■「適しています」というよりも、「お互いに我慢しましょう」というものです(笑)。だから、自分にどんなにいいメロディーラインやフレーズが思い浮かんでも、隣の部屋で下手くそなバイオリンを弾かれたら、そりゃもう、創作意欲もへったくれもなくて、苦痛以外の何物でもないでしょ(笑)。
●隣りの部屋ではバイオリンが「ギーコギーコ」、鳴っているとか。
■学生たちの不満を満たそうとすると当然、建設コストもアップしますから賃料も高くなる。でも学生の4年間、隣に迷惑をかけることなく練習できるのだから、よしとする、何が何でもプロになりたい学生はいるはずだと思って川越の事業を決断したんです。プロになれるかどうかは練習量によるといっても過言ではないんですよ。
  
【グッドデザイン賞】
家具やインテリア、電気製品などあらゆるモノなどを対象に「品質の良さ」「使いやすさ」「商品のよさ」などを基準に選ぶ賞。受賞品には、「Gマーク」がつけられる。
ミュージション川越は、2000年に建築・環境デザイン部門で受賞した。高層マンションでありながら、窓の多い美しいデザインとスタジオの遮音性能の高さが評価された。
この賞、1958年(昭和32年)通商産業省(現・経済産業省)がはじめた「グッドデザイン商品選定制度」が前身。現在は(財)日本産業デザイン振興会が主催している。
関係ないけど、タレントで工業デザイナーの稲川淳二も平成8年に「車止め」で受賞している。きれいなデザインの車止め。意外に才能豊かなんだ、と驚き。

【グランドピアノ】
「練習用にはアップライトピアノ。だって部屋が狭くて置けないんだもん」という人が多いだろう。面積をとらぬように縦に弦を張ったアップライトは、弦を横に張ったピアノ本来の形のグランドに比べると、操作性や音量部分でやや劣る。足元に3つあるペダルも、真ん中のペダルの機能が異なる。アップライトは、音を小さくする機能、グランドは音を響かせる機能。狭くて音漏れが気になる環境のためのアップライトらしい機能を搭載しているわけだ。
グランドピアノは、搬入の際に窓やベランダからクレーンでつりあげて入れる場合が多い
ミュージション新江古田では、玄関口からYAMAHAグランドピアノCシリーズのC5L(間口1490mm奥行2000mm高さ1010mm)が入れられ、スタジオにも置ける。
  
    

  

「えっ、社長さんが取材に応じてくださるんですか?」
アポイントの電話の後、ちょっとボー然。社長に話を聞くことになるとは、思ってもみなかった。果たして、社長がこのプロジェクトの具体的な話をどれぐらいできるんだろう。うーん、不安。会社自慢を聞かされたりして。写真で見ると、ちょっと恐そうな感じだし、などと思いつつ、取材へ。
しかし会ってみると、気さくで、感じがよくて、そのうえ「社会における住まいの役割」なんてことをしっかり考えている、実にまじめにモノづくりに取り組む人だったのだ。
このプロジェクトを推し進めているのも、まさに鈴木氏で、自物件の音響スタジオでドラムを叩いてみるなどの行動派。「こんなまじめな経営者の物件なら信用できるかも」とすっかり洗脳されてしまった。もうここまで読むと、「べたぼめじゃん、本当かよ?」と言いたくなるだろうが、本当なんです、これが。鈴木氏の話が本当かどうか、マンションを訪れ、図々しく実験までしてきた。これも次号で特集、期待してね。インタビュー次回は、鈴木氏のこれからの住まいに対する考え方、をお伝えします。

byさかもと